志摩クリエイターズオフィスが
いのこ野の事業、運営を担当します。
英文表記:Shima Creators Office (略称:SCO)
【プロフィール】
代表:竹内千鶴
いのこ野の活用,志摩での文化芸術活動実践のため、
2015年に個人事業として立ち上げました。
*2016年6月、先進国首脳8か国が集まる伊勢志摩サミットにおいて、志摩クリエイターズオフィス企画・編集のアーティストブック「志摩という国」が志摩市公式贈呈品(おみやげ)として首脳たちへ贈呈。
*同年10月、「志摩という国」の モバイル版冊子を出版。
*2017年、m5_architecte、東原建築工房などと進めた、いのこ野(旧小庭)プロジェクトで、ウッドデザイン賞(建築・空間分野)に入賞。
*2020年、三重県木づかい宣言登録事業者に認定。2023年更新。
*2020年、中部デザイン協会に入会
志摩クリエイターズオフィスの取組み
・国登録有形文化財「旧猪子家住宅」の維持管理、運営
*三重県登録有形文化財友の会(さんとうぶん)会員
・気候風土適応住宅「いかだ丸太の家」の維持管理、運営
*三重県木づかい宣言登録事業者
・「いのこ野」全体をランドスケープデザイン作品にする
*中部デザイン協会会員
・伊勢志摩国立公園の文化・芸術・環境・生活を若者の未来に繋ぐ
*一般社団法人ネイチャーホスピタリティ協会ナショナルパーククラブ会員
・「志摩という国」を安心で愉しい持続可能な「人の場所」にする
いのこ野に3つの研究所があります。それぞれが、いのこ野の場所を自立的に活用します。
志摩という国研究所
民俗学者の宮本常一は「志摩という国」で、昔から脈々と流れている志摩の人びとの前向きで活動的な暮らし方を、志摩の歴史や文化、自然を背景に生き生きと描いています。宮本のこの文章を精神的拠り所にして、これからを生きる子供たちに「志摩」という国を引き継ぐために、志摩の自然・くらし・医療・アートをテーマに私たちが今するべきことを考えます。先ずは私たちがワクワクとたのしみながら。
気候風土と住まい方研究所
昭和初期の伝統的木造住宅の修復をきっかけに始まったいのこ野整備作業。大工さんや左官屋さん、瓦屋さんなど、家をつくる職人さんたちの作業をずっと見てきました。
2020年に完成した「いかだ丸太の家」は国交省の気候風土適応住宅に認定されました。風土、季節と共にある家、人の住まい方・・などを考えます。
国際海洋研究所日本支部志摩分室
International Ocean Institute(IOI)
1972年設立のNGO国際海洋研究所。
本部は地中海にあるマルタ共和国の首都マルタです。
数年前、いのこ野の近くに当時日本支部長の大塚万紗子氏が東京から移住(現在支部長顧問)沿岸域の調査研究はじめ、いのこ野整備作業にも参加されてきたことでここに志摩分室を開設することになりました。海に関する様々は活動の“Think & Do Tank" です。
気候風土と住まい方研究所
地球環境、地域の気候風土、住まい、建築についての
考察、研究、実践の記録
志摩の住まいを考える9つの章
志摩市協働事業「志摩の気候風土と住まいづくり学習事業」
委託研究報告書
2023年2月28日
第6章 古民家を再生する/伝統の技をつなぐ
執筆: 平賀美希: 愛知産業大学大学院 造形学研究科建築学専攻・ 修士課程
事例① 旧猪子家住宅
阿児町神明に建つ「旧猪子家住宅」は国の登録有形文化財(建造物)として登録された住まい。主屋と土蔵、そして門柱が登録対象となりました。この住まいは、生命保険会社の支店長などを歴任した徳島県阿波市出身の猪子彌平氏が、自らの住まいとして昭和初期に建設したものです。〔注Ⅰ〕
志摩電鉄の敷設に伴い開発が始まり、戦後に伊勢志摩が国立公園指定を受けることで一気 に保養地としての地位を確立した同地にあって、その先駆け的は建造物として評価されています。和風住宅に組み込まれた洋室、そして隣接する土蔵や門柱は、その家に住む人を権威づけるアイコンの典型的であり、当時の尖端的だった中流住宅が都市部から遠く離れた志摩へも波及していった展開をいまに物語る住まいといえます。
長らく空き家だったこの住宅ですが、2017年に改修・復旧工事を施したことで、今ある住まいへと再生されました。戦前期に趣向を凝らして建てられた住宅を、令和のいま、同等の施工方法や建材・仕上げなどを用いてつくるのは極めて困難というか、もはや不可能とさえいわれています。当時の施工方法を理解し、それに倣った修繕方法を試行錯誤しながら改修が行われました。そこに込められた、「工夫」に触れつつ、積み重なれてきた時間の厚みを感じ、日々の生活を豊かにできるのが古民家再生の価値といえます。
また、古民家の再生によって継承される価値は、その家に住まう人だけが享受できるものではなく、家づくりにかかわった建築家や大工さん、職人さんなどの作り手、さらには再生された古民家に集う人々の生活をも豊かにする地域の拠点ともなっていきます。ヒト・モノ・ コトの寄り添いがそこに生まれます。 志摩の気候風土と住まいづくりについてヒントを与えてくれる家々は、地元に生まれ育ってきた農家・漁家住宅だけでなく、志摩にやってきたひとびとがもたらす文物や住まいも含まれます。以前から志摩にあった住まいやひとびとと、外からやってきたそれらが、気候風土とすり合わせつつ混ざり合い刺激しあって今があるのです。
〔注1〕 猪子氏が退職後に志摩に居を構えたことで、住宅様式だけでなくさまざまな異なる文化や作 法も志摩へもたらしたものと思われる。その契機となったのが保養地であったり、退職後の 住まいであったり、あるいは戦争に伴う疎開だったりした。
和風住宅の中の洋室
文明開化を経て、日本の住まいへ洋室が徐々に入ってきました。最初は、賓客をもてな す空間として和風住宅のとなりに洋館が建てられました。まだ洋室での生活になれない人 びとは応接の場にふさわしい格式を求めたのでした。
それから次第に椅子に座って仕事をするひとびとが、和風住宅に洋室を取り込んだ住まいを手に入れていきます。その際、洋室部分は他の和風住宅とは異なる外部仕上げになっているのが特徴です。洋室を備えてい ることが可視化される必要があったのです。
和風住宅の玄関脇に洋室が設けられた住宅は都市部を中心に建てられ、「文化住宅」と 呼ばれていきます。旧猪子家住宅は昭和9年竣工ですので、当時最先端の住宅様式が志摩 にもたらされたことになります。洋室が日本のなかにどうやって移入され馴染んでいった のか。その一端を感じられるのも旧猪子家住宅の見どころです。
事例② いかだ丸太の家
伝統的な建築技術や、自然との親和性の高い設計手法を用いた事例として、阿児町神明に建つ「いかだ丸太の家」を見学し、設計に携わった建築家の六浦基晴さんに解説いただきました。
この住まいは、石場建てや地元の土と稲わらを混ぜた土壁塗りなど、伝統的な工法で作られています。「いかだ丸太の家」という名前は、真珠養殖用いかだの材料としてつかわれる県産ヒノキの丸太(若年木の間伐材)を屋根材に採用したことに由来しているのだそうです。
志摩の気候風土に適応したものとするため、建物の仕様は、夏の暑さを避けるため軒を深くし、日射しや雨天時の生活環境にも配慮しています。また、一日のうちに海風、凪、陸風など風の種類が変化することから、時間帯に応じた風の通り抜けを考慮し、室内が自然に近い状態になるように工夫されています。伊勢志摩国立公園という敷地に生息している自然樹木も考慮して計画されたそうです。
夏の暑い日にはエアコンをなるべく使わずにすむ設計とし、冬の寒さ厳しいときには暖炉で温まることができる。最近の、気密・断熱性能を高めてエアコンで温度調節する住まいとは異なる選択肢が具体的に示されています。そのほか、建築にあたっては、県内産を中心に、できるだけ近い産地の材を選び、志摩にあった材を用いることで、環境負荷の低減にも寄与しています。
その地域・場所だからこその家づくりがあります。日照や風、気温や湿度などの気候条件、 その地域で育まれてきた木や土、それらの素材を活かしながら形成された伝統的な技術と街並みがあります。
また、家づくりは家族にとってはもちろん、その土地のひとびとにとって もお祭りでした。みんながワクワクして家づくりに参加する企画をとりこむことで、楽しい 思い出になるだけでなく、自分たちが生きる土地やそこにある住まいへの愛着・誇りもまた 育まれるでしょう。 かつてはあたり前だった住まいづくりのあり方は、戦後の住宅大量需要によって大きく変化してしまいました。そのあたり前が、住まいづくりの大切な選択肢として選べることとも、 志摩の気候風土に合った住まいづくりで大切にしたいアプローチといえます。
気候風土適応住宅
現在、日本の住宅政策は「建築物省エネ法」の枠組みのもとで、住宅においても高気密 高断熱化を進めています。エネルギー消費量が減少することから地球環境の保全のほか、 エネルギー問題にも寄与し、さらには光熱費抑制により経済的でもあります。 そこで問題になるのが、もともと外に対して開放的であった温熱環境調整手法による伝統的な木造住宅の家づくりが困難になってしまうことです。省エネ達成へも配慮しつつ、 伝統的な住まいのあり方とも両立できるような枠組みがつくられました。それが「気候風土適応住宅」です。「いかだ丸太の家」もこの「気候風土適応住宅」の枠組みのもとに、地域の気候風土への適応・環境負荷軽減対策を綿密に検討してつくられた住まいです。
住まい方を考える
「志摩の住まいを考える9つの章」研究代表者の
竹内孝治先生は、志摩市志摩町出身です。
「人の場所」をテーマに掲げるいのこ野の取り組みと、
先生の研究テーマ「マイホームの文化史」は基礎でつながっています。
竹内孝治先生の文章はわかりやすく面白いです。
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つながり***ヌゼモン志摩
志摩の文化・芸術・人・場所を編む
ヌゼモン志摩
ヌゼモン志摩はフランス語で「私たちは志摩が好きです」
という意味です。
英虞湾のヘリで何かをつくりながら
それぞれが暮らしています。